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間違いだらけの記憶術情報2(口コミ)

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 ネットでは、記憶術に関するクチコミがかなり流布されています。その中には体験者による好意的なクチコミもありますが、誤解に基づくクチコミや、悪意に満ちた書き込みも当然あります。

 「間違いだらけの記憶術」第2弾では、クチコミ情報に関する典型的な間違いを3点ほどとり上げました。ただし、ここに述べることは、記憶術の書籍や教材の欠陥、販売のための誇大広告などを擁護するものでは決してありません。記憶術本来の目的やその効果、方法についての誤解を解き、記憶術について正しく認識していただきたいのです。

1.指導者によって記憶術のやり方が異なる?

 記憶術には、「○○式」と称するものが巷にいくつが出回っています。そのため、誰の記憶術がいいのか迷うことになるわけですね。でも、すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、イメージを利用して覚える記憶術は原理や基本的な方法がみな同じです。

 記憶術は、古代ギリシャからローマへ、そしてヨーロッパから世界各地へと伝わり、日本には明治に欧米の記憶術本が何冊か翻訳されて広まりました。明治20年代にはすでに、記憶術の「創始者」として、ノウハウ本を出版した人が何人も現れています。日本にはこれまでに何人の「記憶術創始者」が現れたことでしょう。

 現代の日本では「渡辺式記憶術」が最も有名ですが、渡辺式の「創始者」である故・渡辺剛彰氏は父親・彰平氏から学び、その彰平氏は明治の哲学者・井上円了の「資料」を基に研究したとされます。井上円了は「妖怪博士」としても有名ですが、ヨーロッパの記憶術を研究し、明治27年に「記憶術講義」という本を講述により出版しています。

 現在、独自の記憶術であるかのように喧伝されている記憶術の大半は、主に渡辺氏の本で身につけた人が「創案」したものです。記憶術という名称は、ギリシャをルーツとする“mnemonics”を翻訳した言葉であり、この普遍的な方法や名称を実用新案や商標登録にすることはできません。

 大事なことは「誰の記憶術か」ではなく、「どんな練習法で身につけるか」です。方法そのものは知ってしまえばいたってシンプルのもので、様々な独自の方法が生まれる余地はありません。完成されて2千年以上も変わらなかった人類の英知ともいうべき記憶術を、どのように「独創的な改良」をしてより優れたものにしたのか、説明できる人がいたら聞かせてもらいたいものです。

2.記憶術をやるために覚えなければならないことがある?

 記憶術を身につけることに失敗した人が、「記憶術で覚えるために、別のことを覚えなければならない…」という趣旨の、揶揄(やゆ)する書き込みをしているのを見たことがあります。基礎結合法のことをいっているのですね。

 基礎結合法は記憶術の中核となる技術で、絶対に順番を忘れないもののリストに、覚えるべき項目をイメージによって結びつけて覚える方法です。このリストのことを基礎表と読んでいますが、たくさんの基礎表を用意しようとすると、いろいろな道順のリストを作ったりして、それをしっかり記憶しておく必要が生じます。それを心理的な負担と感じる方も少なくないのかもしれませんが、自分の歩き慣れた道です。30番くらいまでの道順を数種類作って覚えておくのは、物覚えの良し悪しに関係なく簡単にできるはずです。

 でも、ネットに書き込みをした方は、「記憶術は簡単で、誰でもすぐできる」という“ふれこみ”をそのまま信じて、「記憶術は練習しなければ身につかない」という当たり前のことに思い至らなかったのでしょう。記憶術に限らず、どんな技術でも方法を知っただけでできるようになるものはありません。車の運転、楽器、スポーツ、方程式の解き方、料理、手品……どんなものにも練習が必要です。

 「記憶術に練習が必要だ、とは書いてなかったぞ」…そうですね。それは誇大広告ではないにしても、ちょっと卑怯な広告かもしれません。でも、それくらいは常識で判断できるくらいの知恵を身につけて欲しいものです。学校の勉強(お利口さん)よりも、世の中で生きていくための利口さ(知恵)が大事なのです。

 記憶術は、正しい方法で段階的に練習すれば必ず身につきます。ただし、到達するレベルや時間には、他のスポーツや習い事と同様にかなりの個人差があることは、常識として知っておかなければなりません。

 こうした記憶術が実用レベルになるまでのプロセスには一切触れず、ひたすら「記憶術を身につければこうなる」という夢物語をたたみかける宣伝広告が、誤解や不信感を生んだことを思えば、記憶術への多少の悪意は仕方のないことかもしれません。

3.記憶術は見世物で、実際の勉強には役立たない?

 かつて、大道芸人が華やかりし頃、記憶術を実演する芸人も何人かいたようです。見物人がその場で出した数十個の単語や数字をたちどころに覚えてしまう芸は誰にとっても驚きだったに違いありません。そうした意味で、記憶術のパフォーマンスにはある種の見世物的な要素があることは確かです。

 しかし、見世物としての記憶術を見て、「実際の勉強には役立たない」と結論を出すのは早すぎます。本当に記憶術で覚えたのかどうか証拠を示すには実演しかないわけで、それも短時間にわかりやすい方法で演じなければなりません。そもそも、記憶術は長期記憶をするためのもの。直後に覚えていることを示すだけでは、単に短期記憶のスピードを誇示したにすぎず、本当の記憶術の威力を伝えていません。記憶術にはパフォーマンスとしての記憶術と、実用記憶術があるのです。

 さて、実際の勉強では具象的な単語の記憶は必要がなく、カタカナ語を含む様々な固有名詞や化学物質名、専門用語などを覚えなければなりません。しかし、これを覚える方法を体系的に記した本は皆無です。また、記憶術の通販教材でも、抽象的な単語や語句を具象的なイメージに変換するための、理論的かつ具体的な方法を十分に示したものは少ないのが現状です。そのため、ある程度記憶術ができるようになった人でも、「勉強には役立たない」と思ってしまうことがあるのでしょう。

 抽象語を含むあらゆる言葉や語句をイメージ化する方法は、渡辺式でいう「イメージ結合法」や「基礎結合法」を使いこなすための必須技術です。このことを軽視した記憶術指導書の存在が、「役に立たない」という誤った情報を生む大きな原因の一つとなっているのかもしれません。

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