記憶法&発想法―頭がよくなる脳の使い方
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記憶を司る海馬の脳細胞は使えば増える

 どうやって数えたのかわかりませんが、脳全体の神経細胞の数は1千億個だといわれます。そして、その1万分の1の神経細胞しかない海馬という器官が、記憶を司っています。

 私たちが見たり、聞いたり、体験したりしたことは、まず海馬に整理されて保存されます。この状態は短期記憶といわれるもので、ほとんどが5分以内に消えてしまいます。
  
 海馬に一時的にファイルされた記憶のうちの一部は、海馬から大脳皮質に移され、そこで長期記憶されます。
  
 こうした海馬の仕組みがわかるまでには、次のような、不幸なエピソードがありました。

治療のため脳の一部を削除された患者の悲劇が、脳科学を発展させた!

 これは1953年のアメリカで起こった出来事です。あるてんかん患者が脳の一部を取り除く手術を受けました。手術は成功し、てんかんの症状は見事に「改善」されたのですが、もっと困った事態を生んだのです。
  
 その患者が削除された脳の一部に海馬が含まれていました。海馬を丸ごと取られた患者は新しい出来事がまったく覚えられなくなったばかりか、手術前11年間の記憶も失ってしまいました。
  
 そんなひどい目にあったのにもかかわらず、彼は記憶障害の研究に協力し、1957年に海馬が記憶に深い関係があることが発見されたのです。
  
 脳の生理学的研究は、脳の一部の摘出手術を受けた患者や、戦争などによる脳損傷患者の協力によって大きく発展することになりました。科学の進歩の陰には、こうした闇の部分が多かれ少なかれ存在するものです。
  
今日では、sMRI(構造的核磁気共鳴画像法)という機器で脳の構造を調べることができるようになり、脳科学の研究は不幸な患者の協力を必要としなくなりました。

常識を覆す大発見! 脳細胞が増えることを発見したマグワイア

 10年以上前の科学関係の本には、「脳細胞だけは生まれたときから減り続け、決して増えることはない」というようなことが書かれていました。私も、そうした記述をあちこちで見るにつけ、がっかりしたものです。
  
 ところが、脳科学の常識だったこの「事実」が、一人の学者の風変わりな研究によってものの見事に覆されてしまiいました。
  
 イギリスの認知神経学者マグワイアは、ロンドン市内のタクシードライバー16人の脳の構造を調べました。ロンドンの道路は複雑で迷いやすく、そこを自由自在にどこにでもいける運転手さんの脳が、一般人と異なるのではないかと考えたのです。

 

 マグワイアの狙いは見事に的中して、ロンドンのドライバーは普通の人よりも海馬の神経細胞の数が多いことが判明しました。さらにその後の研究では、ベテランほど神経細胞が多く、30年ハンドルを握ると、海馬が3パーセントも膨らむということもわかりました。
  
 2000年に最初に発表されたこの研究成果によって、少なくとも海馬においては神経細胞が成人してからも増えるということが事実となったのです。脳研究者にとっては、天動説から地動説になったくらいの衝撃だったかもしれません。
  
 脳は成人してからでも、使えば使うほど性能がよくなるということは、神代の昔からわかっていたことですが、神経細胞が増える海馬の研究もそれを生理学レベルで裏づけるものといえるでしょう。

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